政治的問題に関するイスラームの指導

今日我々が直面している国際的主要問題の一つには、ある地域や国家の政府がどのような政治形態をとるかということである。ここでもまた、イスラームの指導的原則は文句なく適切で、説得力があり、柔軟なものであるから、その原則の真理と合理性は自明のものとなっている。特定の政治形態は、何かある特殊な状況下に置かれた場合にだけ、それがふさわしいかそうでないか判断でき、特定の政治機構が全ての時代、全ての人々の要求を満たすことができると考えるのはくだらない、ということを否定し得る人は誰もいない。イスラームが特定の政治形態を限定しない理由はここにある。イスラームは民主主義をも社会主義をも推さないし、王制や独裁制をも指示しない。政府を作るという手段を広めるかわりに、イスラームは、政治的、国家的問題を独特なやり方でとり扱う原則だけを発表し、形態はどうであれ、一つの政府の義務は、単に正しく公平に思いやりの心をもって果されねばならないと、また常に基本的人権を満たし、これを支持するものでなければならないことを条件づけている。このように「人民による政府」という民主主義の定義のうちでもまず第一のものとして一般に受け取られている部分を強調するかわりに、イスラームは、政府の形態はどうであろうと、それはとにかく「人民のための政府」でなくてはならないと強調している。他の政治形態の中で民主主義が語られる時本当に強調されねばならないことは、その質の問題である。つまり、それは中身のない民主主義であってはならないし、統治者を選挙する人々は、その任にかなう者でなくてはならず、また、統治者として適格で公平な任めを果せる人を選ぶよう、公明正大な動機をもって選挙にのぞむ人でなければならない。このことは、官職につくためのどんな選挙にとっても必須条件として聖クルアーンの中に定められている。

「実にアッラーはあなたがたに命じておられる。信頼は、信頼に足る人に与えられるように。そしてまた、人を裁くには、正義により公正な判断をもってすべきである。」と。

このように結果としてどんな政府が設立されようとも、それは正義をもって、人種、皮膚の色、あるいは信条へのどんな偏見もなく統治すべく義務づけられている。

政治のシステムについて聖クルアーンに述べられた基本的要件から出た規則を簡単にまとめて列参しようと思う。

1. 理想的な政府は国民の生命、名誉、財産を守る義務がある。

2. 政府は個人や民族間の争いを公平に裁かなければならない。

3. 国民的問題は協議により決しなければならない。

4. 政府は衣食住というような国民の基本的要求を満たさなければならない。

5. 人々は生命、財産、名誉が守られる平和で安全な環境が与えられなければならない。

6. 経済機構は公正で秩序だったものでなくてはならない。

7. 政府は全ての人々の健康を守る義務がある。

8. 信仰の自由は守られねばならない。

聖クルアーン:4章59節

「実にアッラーはあなたがた支配者に命じられる。国民があなたがたに与えた信頼に応えよ。」

聖典聖クルアーン:4章59節

「人を裁くにあたっては正義をもってのぞめ。」 同4章59節

「国民的問題は相互の協議により決定される。」 同42章39節

「汝には、飢えることなく裸の心配もない環境を与えよう。汝はそこで渇くこともなく、陽に

さらされたままということもない。」同20章119、120節

人は権力の座にある時、彼が治める地に無秩序を生み、収穫や人々の子孫をほろぼし踏み荒らす。しかし、アッラーはその無秩序をお望みではない。同 2章206節

宗教にはいかなる強制も許されない。同 2章257節

9. 政府は意見を異にする民族といえど、公正に扱わねばならない。

10. 捕虜は手厚く扱われねばならない。

11. 条約や協定は、常に紳士的に守られねばならない。

12. 弱小国に不平等条約を強いてはならない。

13. イスラームの信徒は、国民として国家に従わねばならない。この教えの唯一の例外は、国家が信仰の自由を強制的に奪う命令を出したときである。

14. もし政府と意見の相違が生じた時は、聖クルアーンと聖なる預言者ムハンマドにより示された原則に照らして、解決しなければならない、私利私欲に走ってはいけない。

15. 国民は一般的な幸福と繁栄を推進するために、政府を支持し協力しなければならない。いわゆる反体制運動は禁止されている。同様に政府は、個人であろうと、団体であろうと、彼らに恩恵を保証すべきであり、この努力を妨げてはならない。

16. 強国は他国へのいかなる形の侵略も許されない。武力を頼むのは防衛の場合のみである。

たとえあなたの敵、説を異にする人々であっても、正義以外の何ものをもって物憂むことがないように。常に公正に裁きなさい。それはとりもなおさず義により近いことである。

同5章9節

「戦争状態が生まれるようになるまでは、預言者はだれも捕囚をとるような真似をしてはならない。」同8章68節

「そして、戦争が完全に終息するまで、無償であるいは賠償金を得て、彼らを解き放ちなさい。

これを命じておく。」同47章5節

(注27)「アッラーに任え、神の使者に任えよ。そしてあなたがたのまわりの地位ある人々に」

同4章60節

「あなたがたの間で何であれ意見のくい違いを生じたら、アッラーと神の使者に尋ねよ。」

同4章60節

「正義にかなうことであれば互いに助けあいなさい。しかし悪いことや限度をこえて助け合うことはない。」同5章3節

汝束の間を楽しまんとて、一部階層の人々の生活に眼を奪われることなかれ。

同20章132節