平和への途:国際交流

慈悲深く恵み遍くアッラーの御名において)

皆様アッサラーム・アライクム(あなたがたにアッラーの平安がありますように)
まず最初に、私は今日の私のスピーチを聞きにお越しいただいたことに感謝の意を表します。リクエストしていただいた課題はとても広範に亘っております。この課題にはいろいろな面があり、限られた時間でそれを完全に消化するのは非常に難しいです。このリクエストされた課題とは世界平和の確立です。現在、この課題はとても重要です。しかしながら、時間には制限がありますから、私は平和と公正に基く国際交流について、イスラムの視点から簡潔に述べたいと思います。
現実は、平和と公正は不可分のもので、一つが欠けても他は成り立ちません。知恵ある賢明な人々はこの原則を確かに理解していると思っています。世界に社会的混乱を故意に起こそうとする人々は別として、公正と平和がある限り、如何なる社会も、国家も、全世界でさえも、そこに騒乱や不平があるとは言い難いと思います。にもかかわらず、今日世界のいたる所で不平や無秩序が存在しています。そのような無秩序は、国内的には不平、また国際的には平和が不足することの両面によってもたされています。各国の政府はその政策が公正に基いていることを宣言し、平和はその第一の目的であることを主張するにもかかわらず、そのような騒乱や紛争が何処でも起きているというのが現実です。しかしながら、世界に不満や心配が増していることは間違いありません。従って、騒乱は広まっています。これは、どこかで公正の条件が満たされていないことを証明しています。従って、不平はいつどこにあろうとも、早急に無くす必要があります。
私はアハマディア・ムスリム協会の最高指導者として、公正に基いた平和についての見解を述べたいと思います。アハマディア・ムスリム協会は純粋なる宗教団体です。我々はこの時代に到来する救世主(メシア)、つまり改革者はすでに到来したと完全に信じています。イススラムの真の教えに基づいて世界を照らす者はすでに到来しております。我々はアハマディア協会の創始者ハズラト・ミルザ・グラームアハマド師がその約束された救世主(メシア)、つまり改革者であると確信しております。彼は信者達に聖クルアーンに基づいた真のイスラムの教えを実践し、それを布教することを強く求めました。従って、私が世界に平和と公正の樹立に関して述べることは、全て聖クルアーンに基づいています。
世界平和のためにあなた方も整然と声をあげ、それを実現できるよう努力しています。皆様の良識のおかげで、皆様は平和実現への計画や構想を抱いております。従って、私はこの課題に関して政治的や世俗的視点からは述べず、どのようにして宗教によって平和を樹立できるかに関して述べたいと思います。そして、この目的のために聖クルアーンに基づいた重要なガイダンスを幾つか述べたいと思います。
人間の知識と知性は不完全で、実際には限界があるということを常に理解すべきことが重要です。従って、決定をくだしたり、考えをまとめたりする際に、しばしば、なんらかの要因が人間の心に入り込んで、判断に影響を与え、人間は自分自身の権利を満たそうとします。最終的にこれは不適切な結果と結論を持たらしてしまうのです。しかし、神の戒律は完全無欠で、そこには利害関係や不当な規定は存在しません。これは、神はその創造物の利益とその向上のみを望むからであります。従って、その戒律は完全に正義に基づいています。世界の人々がこの重要なことを認識し、理解する日が来るときこそ、正義と永遠の平和の基礎が敷かれることになります。でなければ、世界平和を構築すべく絶えず努力しているにもかかわらず、我々はこれらの努力がまだ価値のある結果を提供できないことを知るでしょう。
第一次世界大戦後、特定の国々の指導者たちは将来はすべての国の間の友好で平和的な関係を望みました。従って、世界平和を実現するために国際連盟(=国連)が設立されました。その根本的な目的は世界平和の維持と、将来起き得る戦争を防ぐことです。残念なことに、国連のルールと国連が出してきた決議には欠陥と欠点があり、人々と国々の権利を平等に守ることはできませんでした。従って、メンバーの国々は順々に国連から脱退し始めました。従って、不平等が存在するが故に、平和は長く続きませんでした。国連の努力が失敗し、これが第二世界戦争の原因をもたらしました。我々は、7500万人の生命を奪ったこの前代未聞の破壊を熟知しています。その大半は罪のない一般人です。この戦争は世界を目覚めさせるのには十分なはずでした。この出来事は、公正に基づいた策を樹立させ全ての人々に権利が行き亘り、これによって世界平和を確立するのに十分なはずでした。当時の各国政府は多かれ少なかれ平和を樹立するよう心がけた結果、国際連合が設立されました。
しかし、国際連合の設立の土台となるこの偉大な目的は成し遂げられないことがまもなく明らかになりました。今日、いろんな国々の政府の公然なる発言がその失敗を立証しています。
公正に基づいた国際交流及び、平和を樹立する手段にかんしてイスラムはどのように導いているのでしょうか?
神は聖クルアーンによって国家や民族の背景を人間の証明の手段として解明してはいるが、上下を決めるものではないと述べています。従って聖クルアーンは全ての人間は平等であると明記しています。更に、聖預言者ムハンマド(彼に神の平安あれ)は彼の最後の演説で全てのイスラム教徒に対してアラブ人は非アラブ人に、また非アラブ人はアラブ人に優位ではないと述べています。そして彼は、白人は黒人に、また黒人は白人に優位ではないとも説きました。従って、如何なる国籍も人種も平等であるというのがイスラムの分かり易い教えであります。そしたまた、全ての人々が差別や偏見が無く平等な権利を与えられるべきであるということもはっきりと述べられています。これは、異なるグループと民族間に調和の基礎を構築し、そして平和の設立のための鍵となる原則であると思います。
しかしながら、現在、超大国と弱小国の間に溝や亀裂ができています。例えば、国連を見てみますと特定の国々に特権を与えられています。このように安全保障理事会の中に常任理事国と非常任理事国があります。この区別化が不安やフラストレーションンを引き起こす内部原因であることが証明されています。従って、特定の国々がこの不公平に対して抗議しているとの報告を我々は定期的に耳にしています。
イスラムは、いかなる状況においても完全なる正義と平等を教えています。従って、聖クルアーンの5:3節にきわめて重大なガイドラインが見つかります。正義の条件に完全に従うために、憎しみと敵対心に度を超えた人々が対象であっても、公平且つ平等に扱うのが重要であることを当節は教えています。
また聖クルアーンでは、誰であれ、どこであれ、あなた方に善行や道徳を勧告するならば、あなた方はそれを受け入れるべきだと説いています。そして、誰であれ、どこであれ、あなた方に不正や犯罪を勧める時があるならば、あなた方はそれを拒否するべきであります。
ここで当然に浮上する疑問はイスラムに於ける公正の地位とは何かです。
聖クルアーン第4章136節に、もし自分自身、両親、近親者に対して証言する必要があれば、あなた方は必ず正義と真実を遵守すべきです。超大国が自国の利益のため弱小国の権利を侵犯することは決してあってはなりません。そして、弱小国に対して不平等的に接してはいけません。また逆に、弱小国もチャンスを利用して超大国に損害を与えてはなりません。両者とも正義の原則を完全に遵守するように努力すべきです。これこそが国家間の平和的な関係を維持するために重要です。その他に、正義に基づく国家間の平和的な関係に必要な条件が聖クルアーン15:89節に述べられています。そこには他の人の資源や富を羨望すべきではないと啓示されています。同じように、如何なる国も他の国を援助またはサポートする名目で、その国の資源を不当に奪い取ってはなりません。従って、専門技術を提供するという名目で、国々の政府は不当な取引協定または契約を結び、他の国の利益を奪ってはなりません。また同様に、専門技術を提供するという名目で、国々の政府は発展途上国の資源または資産の支配権を奪うことを企んではなりません。人々や国々の政府は知識が不足し、その資源をどのように活用するかを彼等に教える必要がある場合は、それを実行するべきであります。国家や政府というものは、常にそのような恵まれていない人々を救助し、世話することを心がけるべきであります。しかし、そのようなサービスを国家や政治的な利益を得る目的達成と既得権を満たすための手段にしてはなりません。過去60-70年間を振り返ると、恵まれていない国々の発展を手助けするために、国連は複数のプログラムと基金を立ち上げていることがわかります。その努力において彼等は発展途上国の天然資源を開発しました。しかし、その努力にもかかわらず、貧しい国々はどこも先進国の水準には達成していません。その原因の一つは、これら発展途上国の幾多の政府に於ける広範囲に亘る確かな腐敗であります。残念なことに、自分の利益を護るために、先進国はこのような政府と協力し続けなければなりませんでした。取引協定や国際援助とビジネス契約も処理し続けなければなりませんでした。その結果、社会から取り残された人々や貧しい人々の不満と不安が増加し、これがその国の反乱と無秩序につながりました。そして、発展途上国の貧しい人々は不満を増大し、自分たちのリーダだけではなく、大国にも反抗するようになりました。過激派のグループは貧しい人々の不満を利用し、彼らに、自分たちのグループへの参加と憎しみに溢れたイデオロギーへのサポートを勧めたのであります。その当然の結果として、世界平和が破壊されたのです。
イスラムは平和のための様々なる手段に私たちの注意を促しています。平和は、完全なる正義(公正)を必要とします。
そして平和は、常に真実なる証言を立証することを必要としています。そしてまた平和は、私たちが他の人の富を羨望しないことを必要としています。更に平和は、先進国が自分たちの既得権を脇に置き、本当の無私の態度と精神で発展途上国と貧しい国々を世話することを必要とします。
もしこれらのすべての条件が遵守されるならば、真の平和が構築されるでしょう。前述のすべての基準にもかかわらず、ある国が限界を超え、他の国を攻撃し、不当にその天然資源の支配権を奪い取る場合、他の国々はこの無情な行為を防止するための措置をとらなければなりません。しかしながら、彼らはやはり正義を以ってそれをなすべきであります。行動が必要な有事の際、聖クルアーンの第49章で二国間が敵対関係になり局面が戦争へと発展するならば、他の国々は対話によって和解が合意するよう働きかけなければなりません。しかしながら、もし一カ国が和解を受け入れず、戦争を挑むならば、他の国々は結集して侵略行為を阻止しなければなりません。侵略国が敗れたとき、和解案を受け入れるのであれば、他の国々は共同で継続的な平和と和解案を作成すべきであります。他国を縛るような厳しくて、不平等な状態を作るべきではありません。それによってフラストレーションが拡大されないようにすべきです。このような不満の結果、無秩序が更に増大します。第三者の政府が二派の間を和解させる場合は、誠実で完全に公平に行うべきであります。もし他国が第三国に対して反抗的な姿勢をとっても、第三国は公平性を保ち、復讐や敵対心を抱いてはなりませんし、不公平をしてもいけません。全てのグループに権利が与えられるべきであります。従って、正義のために満たすべき条件とは、和解させる国々は自国の利益を得ること、またはいずれの国をも不正に利用してはなりません。いずれのグループも不当に妨害したり、圧迫したりしてはいけません。またその国の資源で利益を得ようとすることもいけません。その国に対して不公平、不必要な制限を科すべきではありません。なぜならばこれらは正義ではありませんし、国々の関係を築くのに何の役にも立たないからです。
決められた時間内で私はこれらの要件を簡潔に述べました。手短に言いますと、もし我々が世界平和を必要としているならば、世界のために、個人的、国家的利益を求めず、公正に基づいたお互いの関係を築くべきであります。もし我々がこれを実践しなかったら、皆さんの中で私に賛同する人もいると思いますが、国家間に出来つつある同盟や連合のために世界に無秩序が更に増加し、その結果恐ろしい破滅を導くでしょう。このような破滅や戦争の影響は確実に幾多の次世代を失う結果をもたらすでしょう。
従って、世界の超大国であるアメリカ合衆国は私が述べた真の公平と善意をもってその役割を果たすべきだと思います。そうするならば世界はあなたがた合衆国の努力を末永く称えることは間違いありません。これらすべてが実現されるように祈っております。

有難うございました。