完全なる宗教

聖クルアーンの教えは全く完璧で全ての年代の人間を導き得るという、イスラームの明快で独特の主張についてはきちんとした裏付けがある。ここではいくつかの主要な本質と例証をあげるにとどめておこうと思う。まず第一にいえることは、イスラームが時代の変化にともなう要求に応えることができ、それはこの教えの数々にどんな改変も加えずともよいように、先んじた内容をはじめから持っているということである。これについてイスラームの現実に即した教えを学ぶことは、非常に素晴らしいことであるので、ここで少しばかりの実例をあげておこうと思う。

1.イスラームはその基本的な主義主張のみを宣言し、時代や状況の変化につれて変更を余儀なくさせられるような詳細については何も規定していない。

2.イスラームは人間の、知的、社会的、政治的進歩にしっかりと留意しており、その教義はすべて起り得る状況に即応するものである。それは国々の間に変化や進歩はどんどん起るということを理解しているだけではなく、全ての人々は或る時の一点において同等の進歩段階にはいるはずがないという事実を踏まえている。たとえば、我々が同時代に生きているとはいっても、地球上のある所ではまだ石器時代の生活様式の人々が住んでいるだろうし、いくつかの部族や民族は我々の時代の千年も昔の段階にいることだろう。彼等の知的、社会的、政治的状況は、我々のものに比べてずっとずっと昔の時代のものだろう。オーストラリア原住民やコンゴのピグニー族に近代政治のイデオロギー(観念)を強いるなどということは、愚劣の極みであるのは誰もが認めると私は考える。

3.イスラームは人間の性格に順応し、人間の必要を十分に満たす宗教である。あり得ないことをすぐにも予想はつくことではあるが、もし万一人間の根本的性格そのものが変わるなどということがない限りは、教義に変更の必要は一切無い。

これらがイスラーム的教えの主要面の一部である。