「おお、預言者よ、お前に月の満ち欠けについて尋ねるものがいたら、こう答えてやれば良い。『月の満ち欠けは、人々の様々な行動や巡礼の時を定める為の手段である。』と。」 (聖クルアーン第2章190節)
イスラーム暦は、月の満ち欠けの周期に基づいており、太陽暦と比べると一年につき約11日短くなっている。1か月は、新月が出た日から次の新月の日までとなっている。だから、太陰暦の1か月は29日か30日間になる。月の満ち欠けを観測することが、祭りの日等を決定する上でたいへん重要になっているのはこの為である。イスラーム暦は、イスラームの聖なる預言者がメッカからメディナへ移り住んだ西暦622年から始まっている。このメッカからメディナへ移り住んだことは『ヒジュラ』(聖遷)として知られている。1年は354日で、30年に11回の閏年(うるうどし)を置く。1年を12か月に分け、断食の第9月(ラマダン)、巡礼の第12月を特に神聖視する。
イスラーム暦と西暦を換算するには、次の式を用いて計算する。
G=H-3×H/100+622
H=G+G-622/32-622
G=西暦(AD)
H=ヒジュラ暦(AH)
以上の式から西暦2016年はヒジュラ暦(イスラーム暦)1437年となる。
イスラーム暦の月の名は以下の通りである。
1.ムハッラム
2.サファル
3.ラビー・ウル・アッワル
4.ラビー・ウッサーニ
5.ジュマダル・ウッラー
6.ジュマダッサーニ
7.ラジャブ
8.シャバーン
9.ラマダーン
10.シャッワール
11.ズルカーダ
12.ズルヒッジャ
これら12か月のうち、1月、7月、11月、12月は特に神聖な月と考えられており、これら4か月の間に戦闘を行うことは罪と見なされる。
聖典クルアーンには次のように記されている。
「1年の月の数は、アッラーが天地を創造された日に12と布告された。そのうちの4か月が神聖月である。」(9章36節)
イスラームでは時間を測るのに、実際には太陰暦と太陽暦の両方とも用いている。1日のうちで、いつ礼拝を行うか等を決める際には、太陽暦による時間が使われる。例えば、日に5度捧げる礼拝の時間や、断食を始めたり終えたりする時間を決める場合等である。また、宗教的行事等が、ある特定の月、あるいは、月のある時期までに行われるものであれば、太陰暦が用いられる。すなわち、断食の月を決めたり、ハッジ(巡礼)の時期やその他の祭りの時期を定める場合等である。
先に述べられたように、イスラーム教徒にとって太陰暦とは太陽暦と比べ重要な暦とされているが、太陽暦の使用等に関して、特に禁止事項等はない。ただし、イスラーム教徒の日々の生活にとって太陰暦の利用は必要不可欠である。